この映画はこんな人におすすめ
人が復讐するには愛があり、
復讐したあとにも愛がある。
それを知りたい人はこの映画を観てください!
『オールドボーイ』の作品情報(監督・キャスト・あらすじ)
日本の公開日 | 2004年11月6日 |
監督 | パク・チャヌク |
脚本 | ワン・ジョユンイム ジュンヒュンパク チャヌク |
キャスト | チェ・ミンシク ユ・ジテ カン・ヘジョン チ・デハン |
原作 | 『ルーズ戦記 オールドボーイ』 土屋ガロン・嶺岸信明 |
音楽 | チョ・ヨンウク |
あらすじ
「獣にも劣る人間だが、生きる権利はあるんじゃないか」
妻子を持ちながら、素行不良な男が、何の前触れもなく誘拐されます。
監禁部屋に入れられた男と外界との繋がりはテレビだけ。
毎日、餃子を食べさせられ、ニュースで妻が殺され自分が犯人にされていることを知らされます。
自分は何のために誘拐されたのか、監禁されたのか。その答えがわからないまま時間だけが過ぎて行きます。
その期間はなんと15年間。
誘拐されたときと同じように何の前触れもなく男は解放されます。
自分が何故15年もの間監禁されたのか原因を知る為、そして復讐をするために、男は犯人を探し始めます。
「この映画のここが面白い!」(ネタバレなし)
「15年間の監禁生活が授業で、解放されてからが宿題」
そう言われたらあなたはどうしますか?
復讐をしますか?原因を探りますか?それとも、それ以外ですか?
この映画の凄いところは、15年間の監禁生活から解放されて、そこから物語が始まるところです。
他の作品なら、「15年間の監禁生活の設定」だけで映画一本出来てしまうでしょう。
つまり、監禁生活の中だけで過去を回想して、というようなパターンです。
ところが、この映画はここから更に濃度のあるミステリーで、観るものを映画の中に引きずり込んで行きます。
映画の中で主人公は15年間の監禁生活で自らがモンスターの性格になったと言っています。
それを演じた主人公デス役のチェ・ミンシクは、まさにモンスター級の強烈な演技を見せてくれます。
彼は、シーンを撮り終えるといつもその場に倒れるくらいだった、というほどの熱の入れよう。
15年もの間監禁された男の復讐心を、チェ・ミンシクは、声に、視線に、身体にのせて表現しているのです。
それはまるで観ているこちらが犯人に復讐したくなるほどです。
この映画は結末を安易に想像できるような映画ではありません。
ただただ、驚愕し、圧倒されるのです。
その為に15年間も、と思いますし、だから15年間も、とも思います。
復讐するには愛があるし、復讐が終わっても愛がこの映画にはあるのです。
ネタバレ解説&考察
(ここから先は映画のネタバレを含みます)
私がこの映画が好きな所は、そこまでするか!というところです。
復讐の為に15年間も監禁させて、という内容もそうですが、伏線の張り方も半端じゃないです。
緻密な伏線の数々
まず、オープニングから伏線が張られています。
デスの手は自殺をしようとする人の命を掴んでいます。対してユジンはその手を離して姉を殺しています。デスは言います「話しがしたい」と。ユジンは「口数が多い」とデスを監禁させます。
冒頭のデスが警察に補導されている場面ではジャンプカットが使われています。(ジャンプカットとは、映像編集、表現の一種で、観ている観客に場面の時間が急に飛んだように感じられる手法です)
この表現はスピード感を現す場合や、不快感を表す時に使われます。このシーンでは、後者の不快感を現しています。
つまり、デスが普通ではない、素行不良な人間を現しているのです。このシーンでデスは娘の誕生日だからとプレゼントの羽根を身につけます。羽根は天使を現しています。天使とは純真無垢を現す存在です。
私はこの羽根を、無垢=知らない と解釈します。デスが羽根を身につけたのは、これから起きる自分の悲劇を「知らない」からです。
そして、終盤のミドが羽根をつけているのも同じことが言えます。自分と関係を持った男が、実は自分の父親だということを「知らない」からです。
冒頭だけでここまで伏線を張っているので、構成力がすごいなと感心します。
そして、この映画で一番注目して欲しい伏線は「舌」です。言葉とはつまり舌です。生ものです。だから寿司屋が出てきます。寿司は生ものです。そしてタコを生で食べるのです。
自分が監禁された場所を探し出すのも餃子の味を頼りにしています。つまり味覚です。
デスがユジンを突き止めるきっかけになった監禁ビジネスでの契約の際の録音も言葉です。「口数が多いから」といった理由で監禁を依頼したシーンです。
ユジンは「姉を妊娠させたのは俺じゃない、お前の舌だ」とデスに言います。デスの言葉が復讐の全ての始まりだったということです。
終盤でミドを救おうとデスが自ら舌を切ったのも言葉を失うためです。ですが、その後に一人取り残されたデスに聞えてきた盗聴されていた声は、ミドと関係を持った時の言葉です。
録音されていた言葉も盗聴されていた言葉もずっと消えることなく心に残るのだということを示唆しています。
『オールドボーイ』のラスト 結末の意味
最後のシーンがわからないという方が多いと思います。雪原の中にデスがいて、ミドがデスに会いに来るシーンです。
あのシーンは「催眠術」がポイントです。「催眠術」とは、「思い込ませること」。この映画は全て「思い込み」から始まっています。
ユジンの姉は妊娠したと「思い込んで」想像妊娠をしました。ユジンはデスが言いふらしたからだと「思い込んで」復讐に走りました。デスとミドの行動も後催眠術によって「思い込まされて」過去を消され、行動させられています。
ですが、この映画で唯一「思い込み」ではないシーンがあります。それはミドの最後の言葉。
「愛してる、おじさん」という言葉です。
ミドはデスを自分の父親だとは最後まで知りません。ですが、ミドは一人の男としてデスを愛しています。二人が関係を持つシーンで、ミドはデスを「喜ばせてあげたい」と言葉と身体でそれを証明しています。
だから、この最後の「愛してる」という言葉だけは思い込みではないのです。ミドは愛していると言って泣きました。デスはその言葉を聞いて笑います。
そのデスは秘密の知らないデスです。催眠術師によってデスはふたつの人格を持たされることになりました。秘密の知らないデスと、秘密を知っているモンスターのふたつ。
そして、モンスターは一歩一歩、歩くごとに歳をとり、70歳で死を迎えると催眠がかけられます。デスは30歳で監禁され、45歳で解放されていますから、モンスターが死を迎えるには25歩必要です。
雪原の上にデスだけの足跡が残っていたのは、秘密を知っているモンスターの足跡です。つまり、秘密の知っているモンスターが一歩一歩、歩いて死んだことを現しています。
「笑う時は世界と一緒泣くときはお前ひとり」
この映画で度々出てきた言葉です。最後のシーンは二人の背中越しに風景が見えます。世界が見えます。二人は世界と一緒に笑っているのです。
この映画はとても悲惨で観るのに耐えられないシーンが多くある映画です。でも、最後のシーンでデスが娘の為に舌を切ってでも、それが無駄に終わることなく救われたのだと思います。
【映画の豆知識】
タランティーノが評価
この映画は2004年のカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞しています。
この映画祭の審査委員長はクエンティン・タランティーノ監督でこの映画を大絶賛しています。
リメイク作としてハリウッド版も作られている
2013年にはハリウッドがリメイクしています。監督はスパイク・リーです。
原作は漫画版『ルーズ戦記オールド・ボーイ』
この映画は『ルーズ戦記オールド・ボーイ』という漫画が原作です。
1996年から1998年に日本の漫画雑誌『漫画アクション』で連載されていました。
映画『オールド・ボーイ』の動画を無料視聴できるサイト
動画配信サイト | オールドボーイ | 無料期間 |
× | 31日間 | |
× | 14日間 | |
○ | 30日間 | |
○ | 30日間 | |
| × | 30日間 |
○ | 31日間 | |
× | 2週間 | |
× | 30日間 | |
△ | 1ヶ月間 |
(※配信情報は2019年5月時点のものです。現在の配信状況は各公式サイトをご確認ください。○=見放題視聴 △=課金視聴 ×=なし)