この映画はこんな人におすすめ
会話劇で起こるミステリーとバイオレンスを楽しみたい方、
タランティーノマジックにかかってみては?
『ヘイトフルエイト』の作品情報(監督・キャスト・あらすじ)
日本の公開日 | 2016年2月27日 |
監督 | クエンティン・タランティーノ |
脚本 | クエンティン・タランティーノ |
キャスト | サミュエル・L・ジャクソン カート・ラッセル ウォルトン・ゴギンズ デミアン・ビチル |
音楽 | エンニオ・モリコーネ |
あらすじ
南北戦争終結後のワイオミング州山中で、猛吹雪が襲いかかり、山小屋で8人の男女が閉じ込められました。
そこに集まったのは、白人と黒人、南軍と北軍とで戦った敵同士、殺人者と保安官。
疑惑が嘘になり、嘘に対して嘘が飛び交う会話劇から一転して、物語は、やがて事件になっていきます。
本作品でエンリオ・モリコーネがアカデミー作曲賞を受賞しています。そして、ジェニファー・ジェイソン・リーが助演女優賞にノミネートされています。
「この映画のここが面白い!」(ネタバレなし)
ハッタリ合戦の会話劇
「誰が殺したか、ではなくて、何故、裁かれるか」密室劇でのサスペンスというと、一体誰が殺したんだと、推理しながら映画を観続けるものです。
ですが、この映画は犯人捜しなどしません。
タランティーノ監督の映画は会話劇が特徴です。物語の中盤までは、激しいアクションは起こらずに、会話劇だけでサスペンスを盛り上げていきます。
一時間ほどはずっと会話しているだけです。
そこに込められた嘘と嘘との探り合いやぶつかりあい。そして、誰が殺したのかということではなくて、何故、裁かれるか、がポイントになってきます。
人が人を殺すのはもちろん、ダメですが、この映画では、それを正義とするなら、と皮肉を込めています。
そして、この映画は6章に分けられていて、ちゃんと解説までしてくれる章があります。サスペンスでそこまで優しい映画はあまりありません。
ですから、観終わった後にもう一度観たくなるのです。
監督が込めた映画への愛情と遊び心
オープニングにタイトルより前にわざわざ自分の名前と8作品目と出したり、四章では監督自らがナレーションを語ります。
これはどういうことかというと、昔の映画館と同じ手法をとっています。
監督「第○回作品」と出して、映画の途中で、5~15分の休憩が入る。黒澤明監督の「七人の侍」を観ていただくとわかりますが、前半が終わった後に「休憩」って思いっきりタイトルが出るんですね。(これをインターミッションと呼びます)
この映画の四章の前、つまり三章の最後にショッキングなことが起こるんですけど、そこでこの映画は一旦、ここで休憩するという意味があるんです。
因みに、日本以外の国では、上映前に音楽がかけられていました。これも昔の映画館の手法で監督の遊び心です。
ネタバレ解説&考察
オープニングのキリスト像の意味は「裁く」
この映画は会話劇が主体ですが、一番のポイントは南北戦争が背景にあるということです。
ウォーレンは黒人、北軍だということで差別用語を連発されます。
南軍の保安官とはいがみ合っていますし、山小屋では南軍の将軍と対立するのもそれが背景にあるからです。
これはそんな人種差別を皮肉っている映画です。
そして、密室というのも大きな伏線です。
誰が敵なのかわからない、誰を信用していいかわからない。だから、嘘かどうかもわからなくなるのです。
ボブがミニーの代わりに店を任されたということに、ミニーをよく知るウォーレンは疑惑を持ちます。
ウォーレンはボブを試そうと、ミニーのパイプのことを聞きます。
でも、ボブは、ミニーが吸っているのはパイプではなく撒き煙草だと答えます。
ジョディとミニーとの会話を聞いていたから、ボブは「レッド・アップル」だと答えられたのです。
しかし、ウォーレンは床に転がっているビーンズを発見して、ボブが嘘をついていることを確信します。
必見の夕食のシーン
ウォーレンが持つリンカーンの手紙が偽物だと分かる場面です。
ルースはそれを本物だと思っていたので、自分が嘘をつかれていたことに不愉快だと言います。
それに対して、ウォーレンは、黒人は白人から身を守るためにこの手紙が必要なのだと答えます。
このやりとりだけで、この時代の人種差別がいかに酷かったかがわかります。
ルースは白人ですが、人種差別をする人間ではありませんでした。
彼は賞金稼ぎではありますが、自分では手を下しません。ですから、首吊り人と呼ばれています。
彼は自分が信頼をした人間なら、信じる人間ではなかったでしょうか。
ルースは毒を飲まされて血を吐きます。
コーヒーの中に毒が入っていることに気がついたルースは、クリスがコーヒーを飲むのを止めます。
ルースはとても横暴ですが、悪の中にも善を持っていたのだと私は思います。
『ヘイトフルエイト』のラスト 結末の意味
そして、善と悪とでいうならば、
殺人者が殺されるのは西部の正義だとオズワルドは言います。
それを判断するのは死刑執行人だと。
山小屋にいる8人は皆、殺人者です。戦争といえども人を殺しています。
ここでオープニングのキリスト像です。山小屋にいる者たちは裁かれているのです。
偏見のなさこそ正義というものの神髄だ。
偏見のままに下された裁きは
常に正義にはなり得ないという危険をはらむ。アーメン。
オズワルドのこの言葉はラストのウォーレンとクリスが一緒にドメルグを首吊りの刑にすることに繋がります。
これは、白人のクリスと黒人のウォーレンが一緒になった、つまり偏見をなくしたといいうことです。
黒人と白人がリンカーンの手紙という嘘を乗り越えて、人種差別を超えることを示唆する終りには感動します。
ヘイトフルエイト(8)というのに、山小屋の中には登場人物が9人います。
(正確には10人ですが)
ですが、御者のO.B.は数に入りません。
彼はどちら側でもないからです。
O.B.は金を払えば白人だろうと、黒人だろうと馬車に乗せます。
そして、ルースにこき使われて、凍えて死にそうだったと暖炉で寝ます。これは、中立であることを表しています。
暖炉はジョージア州を象徴しています。ジョージア州は南北戦争の舞台です。
つまり、そこで彼が寝るという行為は、どちらに行くこともしない。戦わないことを表しています。
ですから、二人を除いた8人であると言えるのです。
【映画の豆知識】
映画の豆知識について
この映画は目を覆いたくなるような残虐な描写があります。
そして、モザイクはかかっていますが、
フルヌードシーンがあるので、R18+指定にされています。
そして、有名な豆知識としては、ルースがドメルグから奪って壊したギターがありますが、あれは本物です。
博物館から借りてきた1870年代に作られた本物のギターです。
それを手違いでルース役のカート・ラッセルが壊してしまいました。
博物館はもちろん激怒しましたが、ギターの破片をキャストたちのサインを書かせて博物館に飾られています。
当映画が好きな方へのおススメ
「パルプフィクション」クエンティン・タランティーノ監督
「ジャンゴ 繋がれざる者」クエンティン・タランティーノ監督
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