この映画はこんな人におすすめ
湊かなえのイヤミスにどっぷりと浸かりたい人
『告白』の作品情報(監督・キャスト・あらすじ)
日本の公開日 | 2010年6月5日 |
監督 | 中島哲也 |
脚本 | 中島哲也 |
キャスト | 松たか子 岡田将生 木村佳乃 芦田愛菜 山口馬木也 高橋努 新井浩文 |
原作 | 湊かなえ |
あらすじ
「私の娘はこのクラスの生徒に殺されました」
学級崩壊している中学校1年B組の終業式後のホームルーム。
雑然としていたクラスの生徒たちは、担任の森口(松たか子)の言葉で一斉に黙り込みます。
森口は、憎しみも怒りの表情も出さず、抑揚もない声で、ただ淡々と連絡事項のように話を続けます。
何故、娘が生徒に殺されたのか、どのように殺されたのか。
森口は犯人に復讐を仕掛けたことを告げて、授業を終え、教師を退職します。
それから、復讐の鬼と化した森口の最後の授業が始まります。それは「命」という授業でした。
「この映画のここが面白い!」(ネタバレなし)
イヤミス
「イヤミス(嫌な気分になるミステリー)」という言葉が再熱した湊かなえ原作の映画です。
小説が原作の映画は、原作を超えられないものですが、この映画はそのジンクスを打ち破っています。
そもそも、映画の原作である、湊かなえの小説「告白」は全て独白という形をとっています。
それを映像にするというのは並大抵の物ではありません。
説明や叙述といった地の文というものがないのですから、映像と演技でそこを補わなくてはいけません。
それをこの映画は、小説の豊かさ、面白さを見事に表現して成功させています。
スローモーションを使った映像美
中島哲也監督はスローモーションを得意とする映像作家です。CMでもそれが話題にもなりました。
映画前半の30分間は森口が主に一人で話しているのに、その美しく残酷な映像で観るものを飽きさせません。
映像や演技だけではありません。流れる音楽もミステリーを増長させる素晴らしい音楽です。
主演の松たか子の怒りと憎しみといった感情を顔だけでそれを表現する演技は身震いするほどの恐さです。
この映画には、その後に飛躍した生徒役の役者が大勢います。
芦田愛菜、橋本愛、 能年玲奈(現、のん)等は映画やドラマの主演や朝ドラのヒロインにもなりました。
それに注目してこの映画を観るのも悪くありません。
ネタバレ解説&考察
母親
後味の悪いミステリー(イヤミス)という言葉はこの小説、そして、映画で広まりました。
森口の無表情の中にある、中学生二人に対しての復讐といった執念は凄まじいものがあります。
それを演じきった松たか子は凄い役者さんだなと思い、この映画を観て私は大好きになりました。
また、犯人である下村(藤原薫)の母親役も木村佳乃でなければ成立しなかったのでは?と思わせる演技です。
裕福な家庭で生まれ育ち、何の苦労もしてこなかったであろう母親が子供を溺愛しすぎるあまりに狂気に走る。
その母親を全く違和感なく演じているからです。
監督の生徒の使い方も素晴らしいです。
冒頭の教室でクラスが崩壊しているさまを見せていますが、あれは、生徒たちが本当に騒いでいます。
その生徒たちの素の部分と演技の部分とを映画内でマッチさせた演出力は魅力的です。
映画内の生徒たちは13歳です。国の法、少年法によって14歳以上でなければ刑事事件に問われません。
森口の娘の愛美(芦田愛菜)は事故死と判断されましたが、少年法があるため森口は警察に事実を告げません。
その理不尽な理由に対して、森口は自分の手で復讐に走る話です。
教師は、世間で言う常識を慮る職です。いわば聖職者です。その聖職者が復讐の鬼と化していきます。
その矛盾した設定が、このミステリーの内容をより深みのあるものにしています。
そして、この映画を「母親」もしくは「母性」として観るとまた違った見方が出来ます。
主要な人物はみんな、「母親」が関係しています。
森口は殺された愛美の母親ですし、犯人の渡辺(西井幸人)は自分を捨てた母親に執着しています。
同じ犯人の下村は母親から溺愛されていますし母親のその愛し方は異常とも言えるほどです。
そして、渡辺に殺された美月(橋本愛)は渡辺の唯一の理解者です。これは母性だと解釈できます。
そういう観方をしてみると、思春期の子供には母親の影響がどれほど強いかと考えさせられます。
ルナシー事件
中学生は大人へと向かっていく過程の真っただ中にいます。大人ではないけど、子供でもない。
無邪気さと残酷さが紙一重になる段階でもあります。
その無邪気さと残酷さが渡辺と下村が愛美を殺したり、クラスの人間がいじめをしたりします。
美月はいじめには加わりませんが、家族を毒殺したルナシーと呼ばれる同年代の人間を崇拝しています。
渡辺が愛美を殺そうとしたのは、自分の母親が自分に振り向いて欲しいからです。
自分に対して母性を持つ美月を殺したのも実は伏線で、最後に自分の母親を殺すことがそれにあたります。
この時点で、母親を殺すことがもうすでに表されているのです。
一方の下村が愛美を殺した理由は、渡辺にプライドを傷つけられたからだけではなくて、これも伏線です。
自分の母親が過保護なため、それを疎ましく、劣等感に思っていたからです。
だから、愛美を殺すことで自分の中の母親を殺そうとしたのです。
そして、最終的に下村は母親を殺します。伏線の回収です。
『告白』のラスト 結末の意味
ラストの森口の「なーんてね」という台詞は意味がわかりづらいかもしれません。
この台詞は、渡辺がどうやって愛美を殺したのか問い詰めた森口に嬉々として語ったシーンにあります。
渡辺は愛美を殺した方法を語った後で、茶化すように「なーんてね」と言ったのです。
そして、何故、この台詞が映画に、しかもラストショットで加えられたのか。
それは、映画でしか出来ない表現があるからです。
このラストショットは黒味(画面が真っ黒)の状態で台詞のみです。
映画で黒味が使われるのは、始まりか終りかのどちらかです。
ラストショットでこの黒味と台詞が使われているということは、二つの意味が込められています。
森口の復讐が終わったことと、渡辺の更生が始まったという意味です。
その意味を、渡辺に言われた森口が「なーんてね」と言い返して、茶化して終わる。
こんな皮肉で復讐された終わり方はありません。
【映画の豆知識】
映画の豆知識について
中島哲也監督はとにかく厳しい演技指導で有名です。
冒頭の教室のシーンの撮影の最中に主演の松たか子はその影響か、鼻血を出したことを告白しています。
そして、原作者の湊かなえも、この小説の第一章を執筆中に鼻血を出したと告白しています。
あのシーンの意味
渡辺が逆時計を作ったのは、母親との時間をやり直したかったからです。
それが、ラストの場面で、大学の研究室の爆弾が爆発して、それまで時間が逆回りだった時計が止まります。
これは、渡辺がやり直したかった母親との時間が終わったことを意味しています。
当映画が好きな方へのおススメ
「悪の教典」 三池崇史監督
「渇き。」 中島哲也監督
「冷たい熱帯魚」 園子温監督
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