この映画はこんな人におすすめ
SF映画が好きで、特にAI(人工知能)に興味のある方におすすめ。
静かに哲学的な気分に浸りたい方向けです。
『2001年宇宙の旅』の作品情報(監督・キャスト・あらすじ)
日本の公開日 | 1981年10月25日 |
監督 | スタンリー・キューブリック |
脚本 | スタンリー・キューブリック アーサー・C・クラーク |
キャスト | ケア・デュリア ゲイリー・ロックウッド ウィリアム・シルベスター ダニエル・リクター レナード・ロシター |
原作 | アーサー・C・クラーク |
あらすじ
「人類の夜明け」
400万年前のアフリカ。
集団で暮らす猿人たちの前に、ある朝モノリス(黒い石板のような直方体)が現われます。
それに触れたあと、猿人は動物の骨が道具として使えることに気づき、それを武器にして他の集団の猿人を倒しました。
雄叫びとともに放り投げたその骨は、遠い未来、人類が月に行くようになったころの宇宙船へと重なるのでした。
20世紀の終わり。 月面でモノリスが発見され、そこから強力な電波が木星に向けて発せられたことがわかりました。
「木星探査計画 18ヵ月後」 木星に向かって航行中のディスカバリー号。船内ではボウマン船長とプールの二人が活動しており、他に三人のクルーが人工冬眠の状態で乗っています。
この船のすべてをコントロールしているのは完全無欠のコンピュータ、HAL9000。
しかしそのHALがミスを犯しました。不信感を抱いたボウマンとプールは、HALの回路を切断する相談をします。
そんな折、船外作業中のプールがHALによって宇宙空間に放り出されてしまいます。
ボウマンが急いで救出に向かいますが、その間にHALは人工冬眠の生命維持装置を切ってクルーを殺害、船に戻ろうとするボウマンを締め出して呼びかけにも応じなくなります。
手動でハッチを開けなんとか船内に戻ったボウマンは、HALの回路を切りました。
すると突然、映像が流れ始めました。 今回のミッションの真の目的がHALだけに伝えられていたこと、そしてそれが、木星で知的生命体に関する調査を行なう、ということだったというのです。
「木星と無限のかなた」 たったひとりで木星に向かったボウマンは、巨大なモノリスに導かれるように“スターゲイト”を通り、やがて白い部屋にたどり着きます。
ボウマンはそこで老人となり、やがてベッドで死を迎え、モノリスによって胎児の姿、“スターチャイルド”に生まれ変わりました。 その胎児は、宇宙空間から地球を見つめているのでした…。
「この映画のここが面白い!」(ネタバレなし)
妥協を許さない完璧主義者
「2001年宇宙の旅」を撮ったスタンリー・キューブリック監督は、完璧主義者として知られています。
ちなみに彼の作品で特に傑作として名高いのは、この「2001年宇宙の旅」のほかに、 「時計じかけのオレンジ」(1971年) 「シャイニング」(1980年)などがあります。
「時計じかけのオレンジ」は、徹底した暴力や性的な描写などが物議を醸しましたが大ヒットを記録しました。
「シャイニング」は、かのスティーブン・キング原作小説の映画化で、キューブリックがどんなホラー映画を撮るのか、と当時話題になりました。
さて話を「2001年宇宙の旅」に戻しますが、この映画を作るときにキューブリックは、子供だましではない、大人の観賞に耐えうる作品にするために、SF作家の第一人者であるアーサー・C・クラークに協力を仰ぎました。
彼の短篇小説「前哨」をもとに物語をつくっていったそうです。
1964年にこの企画が始まり1966年に公開予定でしたが、セット・小道具・音楽・演技・特殊効果…とにかくすべてにこだわる仕事ぶりゆえ、完成し公開されたのは四年後の1968年でした。
クラークは小説「2001年宇宙の旅」を1965年に発表するつもりでしたが、さまざまな事情によりその出版は映画が公開されたあとになりました。
これにはキューブリックの意向が働いたと言われています。
印象的な音楽
「2001年宇宙の旅」では、有名なクラシック音楽が使われています。
月、地球、太陽が一直線に並びタイトルが現われる冒頭に使われているのがリヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』です。
CMやテレビの演出などでよく使われるのでおなじみの曲ですが、この映画に使われたことによって「なにかすごいことが始まるぞ」というイメージが定着したといっても過言ではないでしょう。
オープニング以外にも、この映画のテーマにつながる重要なシーンでこの曲が流れるので気にかけておいてください。
また、回転する宇宙ステーションや宇宙船が進むときに流れるのがヨハン・シュトラウスの『美しく青きドナウ』です。
宇宙空間に浮かぶ金属の物体とミスマッチな感じがしますが、ゆっくりと回転する円形のステーションは、まるでワルツのターンでひるがえるドレスの裾のようですし、宇宙船内で(重力の関係で)ゆっくりとしか歩けない女性 パーサーたちの動きを優雅に感じさせるのに一役買っています。
その後の作品に影響を与えた演出
多種多様な映像作品を見ている現代の私たちからするとあたりまえのように感じますが、この映画にはさまざまな当時としては斬新な表現がたくさんあります。
例えば“スターゲイト”突入のシーン。
色彩にあふれスピード感のあるワープやビッグバン さまざまに明滅しながら浮かぶ正八面体 ソラリゼーション(色の反転)… 日本のアニメーションなどでもよく見られる手法やモチーフがでてきます。
また月面でのシーンですが、アポロ11号が初めて月面に着陸したのが1969年なので、この映画はそれよりも前に作られたことになります。
もちろん科学的に検証を重ねた上で作り上げられたので当然といえば当然ですが、そのリアルな映像には驚かされますね。
ネタバレ解説&考察
予言したかのような未来構図
今から半世紀も前に描いていた未来 この映画の主要なキャラクター、それは人工知能HAL9000です。
“彼”はディスカバリー号のすべての機能を司っています。
そして、長期間のミッションで乗組員がメンタル的に追い込まれないようにするためか、まるで人間のようなウィットに富んだ会話までできる“デキる男”なのです。
その外観は、赤く丸いランプ。 私たちにとってそれは、よく見かける消火栓そのものです。
その無機質な感じのソレが、乗組員の生命を預かり、テレビのインタビューに 「彼らと一緒に働くのは刺激的で楽しい」と答えるのです。
ソレが例えば人型だったり、顔のようなパーツがあればまた印象がちがうのでしょう。
でもソレは消火栓なんです。
その彼が、ボウマン船長に「ハッピーバースデー、フランク」と言ったりするのです。 この映画を初めて見たン十年前にはあまり感じなかったことですが、「ヘイ◯◯、音楽かけて」とか「××、電気をつけて」なんてことが現実になったいま、妙に背筋が寒くなるような感じがしてなりません。
そのHALが、ボウマンに悩みを打ち明けてくるのです。 「今回の任務に疑問を抱いていませんか?」と。
自分だけが真の目的を知らされているという重責、矛盾が、HALの精神を壊してしまったのでしょうか。 この辺りのHALの演出はとても怖いです。
音の聞こえない場所で密談する二人の口もとのアップ それを見つめるHALの目 船外作業中の呼吸音
音もなくしのび寄り、人間を宇宙空間へ放り出してしまうHAL 。やさしい口調で人間を拒絶するHAL それなのに自分の回路が切られるとなると、まるで追い詰められた人間のように 「もうあやまちは犯しません」「お怒りはごもっともです」「協力したいのです」とすり寄ってくるのです。
そしてだんだん口調は遅くなり、幼児退行のような状態になったHALは歌うのです。 「Daisy, Daisy, I'm half crazy,」
目に焼き付くシンメトリーな構図と色づかい
先ほどの密談のシーンなど、キューブリック作品にはシンメトリー(左右対称)の構図が数多く使われています。
向かい合う二人、その間に丸い窓、そして奥(中心)に赤いHALの目…。
人間のいる手前のポッド内は暗く、窓の向こうは照明で白く明るく見えます。
それは単なる左右対称だけでなく、一点透視図法(奥行き方向の線がすべて消失点という一点に収束するように放射状になっている構図)が用いられています。
宇宙船内部の通路、月面基地への着陸シーン
モノリス発掘現場
木星に到達してからの白い部屋も家具や彫刻などが左右対称に配置され、中心に奥行きを感じさせる構図となっています。
また、時に大胆なその色使いにドキっとさせられることも多いです。
人工的な白い宇宙船内の通路に置かれた真っ赤な流線型のイス ディスカバリー号の白い室内には黒いイス 木星の白い部屋の中での宇宙服の赤や、突然あらわれるモノリスの黒など、違和感をおぼえるほどの色使いが印象的です。
CGなしの特殊効果!?
この映画でSFXを担当したひとり、ダグラス・トランブルをご存知でしょうか。
『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』『スター・トレック』などSF映画の名だたる傑作でSFXを担当し、『ブレードランナー』では特撮監督をつとめています。
自身でも『ブレインストーム』という監督作品があります。 “スターゲイト”突入のシーンは、彼が開発したスリット・スキャンという技術を使って撮影されました。
「2001年宇宙の旅」は1968年公開の映画なので、まだCGなどはほとんどなく、ディスカバリー号内のモニターに映る画像など、ワイヤーで模型を作ってそれを動かして撮影したりしたそうです。
また宇宙船内部のシーンは、巨大な回転するセットを作って重力おかまいなしに歩いているように撮影しました。
こういった、特撮に注目して映画をみるのも面白いと思いますよ。
『2001年、宇宙の旅』のラスト 結末の意味
難解なラストシーン 映画公開以来、多くの人に難解が、わけがわからない、と言われていたラストシーン。それについてキューブリック本人がインタビューに答えた動画がアップされています。
それによりますと、 ボウマン船長は、神のような無形の、純粋なエネルギーの知的生命体に取り込まれたといいます。
その生命体は人間を、まるで人間が動物園で動物を飼うように、あの白い部屋で人間を観察していたのです。
ボウマン船長の全人生があの白い部屋を通過し、彼の命が尽きたとき、彼は時間を超越した存在となり地球に戻っていった、ということです。 その後の“スターチャイルド”がどうなったか(何をしたのか)は誰にもキューブリック本人にもわかっていなかったのかもしれません…。
【映画の豆知識】
映画の豆知識について
スタジオ撮影と中の人 映画の序盤、猿人たちのシーンはなんと、ロケではなくスタジオで撮影されたそうです。
屋外の感じを出すためたくさんの照明をたいたとか、キューブリックが飛行機に乗るのが苦手だからスタッフが撮ってきたスチール写真と組み合わせたとか、いろいろとエピソードが残っています。
そして猿人ですが、これは俳優さんたちが着ぐるみを着て演技しているそうです。ただし、赤ちゃんだけは演技できないということで、本物の猿を使ったそうです。
おっぱいをあげるシーンをうまく撮るために、何日か連れて帰って一緒に生活したそうですが、苦労して撮ったシーンが気に入らず、監督はバッサリカットしてしまったそうです。
INTERMISSION-途中休憩
この映画では途中で INTERMISSION(途中休憩)が入ります。かつて長編映画には途中休憩があり、映画館での飲食物の売り上げを伸ばすことや観客へのトイレ休憩などの目的がありました。
当映画が好きな方へのおススメ
「A.I.」 スティーブン・スピルバーグ監督(他にも「未知との遭遇」)
「プロメテウス」 リドリー・スコット監督(他にも「ブレードランナー」)
「惑星ソラリス」 アンドレイ・タルコフスキー監督
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